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清水健太さんからプロを目指す子供達へ。

最終回です!

 

神戸> ダンサーの奥様と結婚されて、お子さんがいて、ダンサーをやりながら家庭を作っておられる中で大変なこととか、逆によかったな、ということとかありますか?

清水> 結婚して僕が大変になったってことはそんなにないですね。

  独身の時とそれほどやること変わってなくて、子育てとかは全然苦じゃないし、家事全般、炊事とか一人の時から全然できちゃうタイプなので。多分奥さんが大変だと思う。例えば自分が
    1ヶ月いないと二人でやってたことを全部一人でやらなきゃいけない時期があるから。料理とか絶対奥さんも大変だしね。
    子供は子供でパパが仕事だろうがなんだろうが、なんでパパ帰ってこないのっていう思いがあると思うし。

神戸> ダンサーの奥さんだからこその理解というのは感じますか?

清水> 同じダンサーとして、年齢的にも僕が今しか踊れない、と言うのをわかってくれているから文句も言わず頑張ってくれているんだろうなと思います。

神戸> 子供は女の子ですか?

清水> 男2人です。

神戸> バレエは習わせますか?

清水> 本人たちがやりたいって言ったら自分の父親と同じ選択をすると思うけど、無理にさせようとは思わないですね。

  二人ともね、後ろ姿は僕にそっくりなの。なで肩で。ちょっとむっちりした肉がついてて、お尻ボコンってしてて脚まっすぐで。すごく自分に似ていて5番とか超綺麗なの(笑)。

  真似っこできるんだけど、でもバレエやりたいって言わないですね。

神戸> 全く?

清水> パパが王子様とかやる舞台も何回も見にきているんだけど、全然言わないですね。

  今は専ら水泳かな、好きなのは。このあいだ体操選手がテレビに出ていて、オリンピック出たいとか言ってましてけどね。体操とか水泳とかそっち系かな?

  踊るのも、音に合わせて踊ったりするのは好きだけど、でもバレエじゃないですね。

  自分達が学生だった時の感じがそのまま今きたら、競争が大変だと思うよ。

  時代が違うんだとは思うけれど14、15才で、え!!っ今こんななの?ってなる。

神戸> 小学生のコンクールをみてもヴァリエーションを綺麗に踊れていて、3回も回ります、足ここまで上がってます、つま先こんなに綺麗です、って驚きますよね。

  この子たちがみんな上手になったら、すごい世界が出来上がるんじゃないかって思いますね。今は本当に素材が良い子がたくさんいるんですけどね。

  でも辞めてしまう人が多かったり、なかなか発展しにくいですよね、日本では。

清水> 国内ではまだ難しいよね。バレエ団はいくつかありますけどそれでは生きていけないですからね。

神戸> 清水さん自身がダンサーになって、よかったことは何でしょうか。

清水> まず一つは道を外すことがなかったことかな(笑)。

  若い多感な時期に非行に走るとかそんな暇もないくらいバレエがずっと付きまとっていたわけだから。

  最近はバレエをやっている若い子にしても、どうなりたいかってはっきり答えられない子たちが多いでしょ。でもあの時の僕って、バレエで食べていきたいって多分はっきり言えていたと思うのね、それがありがたいなって思って。それって今も変わってないんだよね。

  バレエが好きだからバレエをやっているし、バレエのおかげでいろんな人とこうやって繋がることができているわけだし。だんだん歳をとるごとにいろいろな世界と繋がって、いろいろなことが勉強できるのもバレエのおかげですしね。

  二つ目は、親にちょっとだけ恩返しができているのかなって思います。親がバレエ見るが好きだから。

神戸> 今バレエをやっている子供たちにはそういう素直な喜びを感じて欲しいなって思いますね。

清水> 子供たちに、どうやったらプロになれますか?って訊かれたら神戸さんはどう答える?

  僕は運が良かったんだよとしか言いようがなくて、自分はたまたまできたわけであって。何をどうしたとか具体的には言えないですね。

  役柄をどうやって考えていますか?とか、この音の取り方、どうやったらうまく見えますか?とかそういう技術的なところは説明してあげれるけど、どうやったらプロになれますか、というのはとても難しい質問ですね。

神戸> 人と比べないで、自分の中でやりたいことやるっていう強さが必要なのかな、と今日話を伺っていて思いました。

  誰かがやれって言ったとか、みんながこうしているからとかじゃなくて、自分が無我夢中になるっていうのは大事ですね。

清水> 本当に、無我夢中だね。頭で理解してやろうとしているうちって多分上達しないよね。もうとにかくやる、みたいなのがバレエには必要だよね。

 

神戸> 今の時代は映像でパッと色々なことが見えちゃったり、調べられちゃったりするからみんな簡単に手に入るような気がしちゃうんだろうけど。そうじゃないですね。

  もちろん動画とかを、例えばジゼルならジゼルで、あ、この人はここの音をこうやって使っているんだとか、アイディアをもらったりはするけれど、それだけではなくて、それを踏まえて自分はどうするかって自分の中で考える時間がすごく必要ですね。

清水> 僕たちの時って、見たいダンサーとかがいてもビデオとかでしか見れなかったし、見れないんだったらチケット買って舞台観に行くしかなかった。

  でもそれはすごい良かったなって今思っていて。そういう感動って絶対忘れないもんね。生でギエム観たとか、ゼレンスキー観たとか今でも覚えてますし。

  今はなんでも観れちゃうし、テクニックなんかも真似できちゃう。でも味がある若い子っていないよね。面白い子って。

 

神戸> 十代の自分にアドバイスをするとしたら何かありますか?

清水> もう少し賢かったらよかった。

神戸> どういう賢さでしょうか?

清水> 十代のときの自分にとって留学したときのあの挫折感は必要だったんだって思うけど、そこを、例えばそれまで通りにトントン拍子にうまくできていたらまたちょっと違っていたのかな、って思って。

  あとは人の話をもう少し聞いておけばよかったのにな、って思うときもありますね。今思えば、あぁ、あの人嫌われ役買ってくれてたんだなって思うときもあるし。

 

神戸> でもそれも大事なことですよね。それこそプリンシパルまで上がっていくっていう人は、絶対的に譲れないみたいな何かしらがそれぞれあるんだなって思いますね。

清水> ありましたね。いまでは丸くなったと思う。

神戸> その時譲れなかったものって何でしょうか?

清水> 発表会専門にやっている男性の先輩と揉めることが多かったですね。あ、僕はそれやりたくないですみたいな。

  お仕事なんだけど、なんかどっかでプライドが邪魔してというか、そういうのがあったんだろうね。

神戸> でも踊りに対するプライドがあるからこそですよね。

清水> もちろん発表会は必要だけどね、自分が目指していたバレエはそこじゃなかったから。

神戸> バレエに対して気持ちがない人が嫌だったってことですね。

清水> 見るからになんでこの人がプロと名乗ってバレエやってるのっていうような人に何か言われることが嫌だった。

  でもそう思うとバレエに対してずっとまっすぐだったなあ、と思いますね。

  別に挫折した時にプロにならずに発表会でうまくやっていけば食べていけていたんだと思いますが、でも断固としてそれを選ぼうと思ったことは一回もない。

  今でもそう。だから引退したらどうしようっかなって今すごい考えている。

神戸> そうなんですか!?

清水> 発表会だけでって、ってなるもんね。

神戸> 演出振付はどうですか?

清水> 生活のためには今後はやらなきゃいけないけれど、どこかで今は現役ダンサーだから、ちゃんとやりたいことやりたいというのがあって。今は生計たててられるから良いんだけど、今一番悩みますね。何をもって引退なのか、引退したときに何を変えなくてはならないのか。

神戸> 引退というのは、体が動く限りは続けてってことでしょうか?

清水> うん。今はちょうど良いんだよね。頭と身体のバランスが。体はちょっと落ちてきてはいるけど。昔とレッスンの仕方が変わったかな。量より質になりますね。

神戸> その変化はきっと舞台に出ると思います。毎日のメンテナンスや心の持ちよう。本当に素敵な人は舞台も素敵になる。

清水> なるべく長く踊ってたいけどなって思います。舞台楽しいんですよね。
            だから10代の自分に何かアドバイスするんだったら、もうちょっと舞台に立てるありがたみを感じたほうが良いよってことですかね。

神戸> なるほど。

清水> 回数が多いと当たり前のようになっちゃうから。あ、今日も舞台か、みたいな。こないだのジゼルも、一回で終わっちゃうのが本当にさみしかったです。

神戸> 同じパートナーと何回も踊ったり、同じ演出で何回もやると見えてくるものがありますよね。     

  この作品はものすごい大好きっていうのは何でしょうか。できれば最後に踊りたいというような。

清水> 踊ってて幕が降りて欲しくないなって思ったのはアルブレヒトとロミオかな。この二つはダントツで大好きです。カルメンのドン・ホセも踊っててすごく楽しかったです。

神戸> 幕が降りて欲しくないなって感覚ですね。

  アルブレヒトってあの後どんな感じなんでしょうね、もし幕が降りなかったら。

清水> バチルドと壮絶な修羅場が・・(笑)でもバチルドと結婚したとしてもジゼルに対する想いは深くなりそうですね。最愛の人が最後に愛の形をして見せてくれたわけだから。

  幸江さんのカンパニーの初演の時に1幕の終わり方についてかなり話をしたんですよね、結構アルブレヒトがあっさり帰っちゃうパターンが多くて。

  でもぼくは帰れない派なの。

  連れさられるけど振り払って戻るっていうのが自分の正直な気持ちなんですよね。

神戸> そうあってほしいですね。でもアルブレヒトだから少し冷たい感じもないといけないのかなっても思います。

清水> だからあそこに違和感ある人もいるってことだよね。ぼくのやりたいアルブレヒトは未練がある感じなんだけど。そこがなんかちょっと女々しいというか、良い人すぎるとか。

  やる度にアルブレヒトは難しいなって思います。何もしていない時のたたずまいとか、見せ方とか、いかにゼロに近づけられるかというか。

  ああいう役は作れば作るほど白けてしまいますからね。そこが難しいなって毎回思いますね。相手によっても変わって来るし、面白いですね。

  相手の経験値によっても全然かわってきますしね、舞台って本当に面白いです。

  そういう意味でも、やっぱり一回一回舞台のありがたみを感じて、大切にして欲しいと思いますね。そのとき、その場で、その人としか作れないものだから。

  そういうことをそれこそ10代のころから感じられていたら素晴らしいと思います!

 

 

  いかがでしたでしょうか。全4回にわたるスペシャル対談。

  プロを目指すというのはどういうことなのか、また舞台に立つということはどういうことなのか。

  それぞれに受け止めていただいて、自分自身のことを考えるきっかけになれば幸いです!

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清水健太さんが語る!プロを目指す子供達へ ④

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