バレエジャポンでも大反響を頂きました井脇幸江さんへのインタビュー記事がバレエTVにも登場!
より多くの方に読んで頂きたいインタビューですので、ぜひご覧ください。

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東京バレエ団退団後、ご自身のカンパニーを設立。
精力的に公演活動を行う傍ら、後進の指導にもエネルギーを注ぐIwakiBalletCompany(以下IBC)芸術監督の井脇幸江さんにお話を伺いました。
今回は2018年11月25日(日)に上演されるIBC公演「ジゼル」について、そして子どもたちへのメッセージを頂きました。
インタビュアーは神戸里奈さん。
トップダンサーのお二人によるインタビューは読み応えたっぷりです!
全4回のロングインタビューをどうぞじっくりとご覧ください♪

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井脇幸江さん × 神戸里奈さんロングインタビュー【第1回】

神戸> まず、はじめに長く在籍されていた東京バレエ団を退団された後、ご自身で新しいバレエ団を創設されたということですが、その時のお気持ちや目標、ご自身の中でどのように気持ちが動いたのかお聞きしたいです。

井脇> そうですね…、東京バレエ団を退団した時は、まさかその年にバレエ団を作ることになるとは思ってもいませんでした。
東京バレエ団との関わりは、8才から40年ちかくだったので、通わない日が来ることが想像つきませんでした。

神戸> 当たり前の日常がなくなるって不安になりますよね。

井脇> でも実際に退団した日、駅に向かう道を歩きながら感じたのは「爽快感」でした。
3月末日でしたが、お天気がすごく良く暖かくて、とにかく気持ちが良かったのをはっきりと覚えています。
やっぱり長くいると凄く辛い想いもあったんでしょうね。

神戸> そうですよね、色々。

井脇> 退団後の不安はもちろんありましたが、なんでも有り!の未来が、楽しみでもありました。
私は元来、人の前に出るよりも裏から支えたい性分なので、生徒や後輩たちに自分の経験を伝えていく仕事がしたいと思っていました。
それならば、私の持っている全てを伝えたいと考え、古典作品での公演を打ちたいと思うようになりました。
でも自分一人では団員を抱えられないし、毎日レッスンもしてあげられない…。
そこで、公演ごとにダンサーをオーディションで募り、数ヶ月かけることで高いレベルの舞台を創れるのではないか?と考えたのです。
舞台を創ると決まったら、何の迷いもなく『ジゼル』が浮かびました。

それは、私が一番多く踊った作品でしたし、ありとあらゆる世界の一流ダンサーたちと共演することで、彼らの解釈や演技を客観的に見ることによって、自分なりのジゼル像やアルブレヒト像なども出来上がってきていました。
だから時には「うーん、それだと辻褄が合わないな」とか、バレエを見慣れている人だけのルールがあったら、伝わりにくいだろうな…などと考えるようにもなっていました。
ヒラリオンの描き方も、主演者のためには悪人っぽいほうが良いのかもしれないけど、横恋慕の嫌な人ではないはずだな、と感じていたり。

神戸> 悪者じゃないと言うか

井脇> そうそう!盗人たけだけしく、人の家の窓を開けて剣を見つけ出すのは、私としては違和感がありました。
バチルド姫も、高飛車でツンケンしているのではなく、同じ結婚を控えた者同士だからこそ、ジゼルと一瞬心が打ち解けてネックレスをプレゼントしたくなったのではないか?とか…。
ミルタも、ただ怖い表情をしたまま「No!」というのがお仕事みたいになりがちですが、そんなはずはないと思いました。
私は役を頂いた時はそれぞれの役がその動きをするにはどうやったら辻褄が合うかというとっても根本的なことから研究していたので、一つひとつの役に対して私だったらこの役はこう創るなとか、私がその役を踊るのならこう踊るなとか、女性の役だけではなくて男性の役も含め、思うところがたくさんあったんですよね。

神戸> なるほど、そうなんですね。

井脇> だから実は頭の中にはすでに私なりの『ジゼル』があったんですよね。
変な言い方ですが、紙の上でも作品が創れるくらいに。

神戸> すごいですね!

井脇> そう、だから上演が決まってからはスーッと出来上がったんですよ。

神戸> ジゼル役、そして相手役であるアルブレヒト役のキャスティングに関してはどのように決められたのですか?

井脇> キャスティングに関しては、当初は自分で踊ろうとは思いませんでしたが、周りのすすめもあって踊ることにしました。
その時に清水健太さんをご紹介いただき初めてお会いしました。
お会いしてみたら本当に王子様の出で立ちでドキドキしました(笑)

神戸> そうですよね(笑)

井脇> 事前に衣装を着てポスター撮影も行いましたが、カメラの前に立つとカチッとスイッチが入るでしょ、彼は。

神戸> はい、そうですね。

井脇> しかも『ジゼル』は大好きな作品なんですって。

神戸> あぁ、そう思います!

井脇> 彼には本当に助けられて、ほとんど苦労なく踊れました。

神戸> 本当にパートナーシップですよね。

井脇> ジゼルは初めて演じたんですけど、体力的に精神的にもあまりにも楽だったので、途中で「なんか曲飛ばしてないかな?」って不安になって、周りの人たちに「曲、飛ばしてないよね?」って聞いたくらいです。
でも「ちゃんと全部踊ってますよ(笑)」って言われて。
それくらい踊ることが自然でした。
でも反対に、ミルタを踊るのって凄く大変だったんだな、と気づきました。

神戸> そうだと思います。体力的にも、精神的にも…。

井脇> 体力や精神もそうだけど、トゥシューズ選びに関しても、パドブレで舞台を横断したり、グランジャンプ(大きなジャンプ)やピルエット(回転)もあるので先は硬いほうが良いけれど、音を消さなくてはならない。
技術的にもとても難しい踊りだと思います。

神戸> しかもあの暗い中で(笑)

井脇> そう、1幕とは全く違う場面なので、登場のシーンは特に緊張感がありました。
助演者としてそれだけ緊張感をもって踊ってきたので、主演するとなったときは凄く気合いを入れていたんです。
でもジゼル役を踊ったことのある仲間たちと話すと「主役はうまいこと休みが作られていて、ちゃんと踊れるように作品が創られているのよ」なんて言われました。
そこで初めてミルタって大変だったんだなって気付きましたね。
今、もしも「ミルタを踊って欲しい」と言われたら「ヤダ…」って言っちゃいます(笑)

神戸> ご自身で一から作られた『ジゼル』という公演を通して、様々な気付きがあったんですね。
作品のストーリーを大事にされて、自分の中でも組み立ててきた、嘘のないバレエへの探求がきっかけとなってバレエ団設立という形に運ばれていったということでしょうかね。

井脇> そうだと思います。

神戸>では『バレエガラ』についてはいかがでしょうか?

井脇>私はそれまで、コンサート形式の舞台で踊った経験がありませんでした。
なので、一度は仲間たちとガラ公演のような舞台を創ってみたいと思っていました。
はじめは連絡先を知っている仲間たちに連絡して「一緒にやらない?」という感じで声を掛けていきました。
一回きりのつもりだったんです。そしたら終演後に、舞台評論家の方から「面白い舞台だった。
ぜひ続けてください」と言っていただいて…。
そう言われると「じゃあやろうかな」と言う単純な性格なので、2年に1度のペースで続けています。

神戸>団員たちを育てることに関しては?

井脇>『ジゼル』のあと、『ドン・キホーテ』『眠れる森の美女』と全幕物を創っていくと、毎回出演してくれるダンサー達が出てきました。
となると、もう少ししっかり面倒を見てあげたい、責任を持って育ててみたい、と考えるようになりました。
それでバレエ団という形にしてみようと思いました。
でも私個人がやることですから、公演の数は多く出来ないし、人数もそんなに多く取れるわけでもない。
でもその代わりに私が長く踊ってきた東京バレエ団と同じレベルで作品にはこだわり、リハーサルの質は高いものがやりたくて、本当にバレエに情熱を持っている人だけを募集して10人くらいを団員として抱えることにしました。

神戸> オーディションはもちろんだと思いますが、それこそキャスティングに関しても本人たちのバレエに対する意欲というか、そういうものを一番大切にされていると言うことですよね。

井脇> そうですね。どんな役でもちゃんと向き合っているダンサーや作品への理解をしようとしているダンサー達と一緒に舞台を作りたいと思っています。

神戸> みんなが同じ方向を向いた公演はやっぱりこうエネルギーがありますよね。

井脇> 真ん中で主役やっていてもちょっとパッと周りのみんなと目を合わせる時ってあるじゃないですか。
その時に集中していない人がいると、なんというか…

神戸> 世界観が…

井脇> そう、気持ちが削がれます。
例えば立役だったとしても、役を理解して演じることに喜びを持っていれば、舞台上の空気はとても良くなり、みんなに助けられて更にノッて踊る事ができる。
舞台って、主演者だけのものではない。
出演者全員で創るもの。
だからお客様の心に感動が届けられるのだと思うのです。
バレエのテクニックは未熟でも、まだ子供でも、プロの舞台に立って良い!と本気で思っています。

神戸> そうですね、色んな人がいて良いと思います。

井脇> そして、バレエを知らない人が観てもわかるようにリアルに作りたくて、お約束ごと…の部分に少しだけ手を加えたりもしています。

神戸> なるほど。

井脇> 舞台が終わると、「幸江さんの演出を観て、納得できました!」と感想をいただいたりします。
そうやって私の思いが通じるのなら、この方向性で創ってみよう、と『ドン・キホーテ』も『眠れる森の美女』も、私なりの解釈で演出し上演してきました。

神戸> なるほど。一番最初にその作品を作った人の中には、その作品のストーリーとそれに対しての意志があったと思うんです。時間が経つにつれて失われたり、薄まったりしているものを井脇さんがもう一度見直して、ご自身の中で全てが筋の通るように作っていかれたというのは参加できた方達にとっても喜びとして感じられたんじゃないかなと思います。

井脇> バレエ団にいると作品毎にダンサーの持ち役ってなんとなく決まってきて、それがだいたい同じメンバーで繰り返されていくんですけど、私たちは毎回上演する度に人が変わります。
同じ舞台なんてあり得ない…のです。
衣装もIBCで抱えていないので、今回はどんなの着る?なんて考えるのも楽しいです。
舞台装置も好みのものが見つかるまで探しますし、地方からお借りすることもあります。
『ドン・キホーテ』は東京と京都からお借りしたものを使いました。
従来のバレエ団と違って毎回初演みたいにできるという所も、IBCの良さだと思っています。

神戸> その時、その集まったメンバーでベストなものを作っていくっていう考えが、このバレエ団の鍵というか、芯になっているんですね。

井脇> そうですね。

神戸> お話を聞いて、今回の公演が凄く楽しみになりました!
 

今回のインタビューはここまで!
引き続き第二回目もどうぞお楽しみに♪

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IwakiBalletCompany芸術監督井脇幸江さんへのインタビュー①

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精力的に公演活動を行う傍ら、後進の指導にもエネルギーを注ぐIwakiBalletCompany(以下IBC)芸術監督の井脇幸江さんにお話を伺いました。
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