第2回では井脇幸江さんの幼少期の体験、バレエとの出会いについてお話をお聞きしました。
さて、今回もどのようなお話がお聞き出来るか楽しみですね♪
では、続きとなります第3回を御覧ください。

井脇幸江さん × 神戸里奈さんロングインタビュー【第3回】

神戸> 現在はご自身の活動の他にもコンクールの審査員も多くされていると思いますが、小学校1年生から出れるようなコンクールも増えてきた現状で、審査員として、何か思うことや言っておきたいことはありますか?

井脇>コンクールと言っても今は本当にたくさんあって、コンクールを目標に頑張る子どもたちが増えてきていると思います。日本人は器用なので、どの国際コンクールでも優秀な成績を収め、世界中でダンサーとして活躍しています。その事自体は素晴らしいことだと思っています。
ただ、「バレエを習うこと=コンクール」ではありません。コンクールで1位を取ればプロになれる…というものではない事を熟知して挑むのであれば、コンクールは良い学びの場所になるでしょう。

神戸>  そうですね、私もそう思います。

井脇> コンクールについてお話するのはとても慎重にしなければならないと思っているのですが、審査員の立場から出場する子どもたちを見ていて感じるのは、テクニック先行型のお子さんと、「バレエ」の世界をちゃんと表現しているお子さんにはっきり分かれているということが挙げられます。
バレエは総合芸術ですので、テクニックだけを競うものではありません。
振付を大幅に変えたり、衣装が作品に合っていなかったり、ティアラの付け方やメイク、ポアントの履き方、舞台の使い方(スペーシング)など、様々な点が審査対象になっています。
そうなると、指導している先生の好みや指導方法が見えてくる場合もあります。
良いダンサーだった人が指導者としても優秀で、プロダンサーの経験を持たない方全てが駄目、ということにはならないので一概には言えないのですが…。
でも…指導者の知識不足というものを感じざるを得ない事も、稀にあります。それは筋肉の付き方や踊り方の癖などには顕著に現れてくるもののようです。

神戸> そうですね、生徒を見るとそのスタジオの先生の指導の仕方というのは伝わってきますよね。

井脇> バレエの世界は奥が深いので、全ての教師が全ての知識や経験を兼ね備えている…というのは難しい話です。私もまだ知らないことは山ほどありますし、日々勉強だと思っています。ということは、「知らないこともある」という謙虚な気持ちが指導者には必要なのではないか?と思うのです。パ・ド・ドゥを踊った経験がなければ、やはり指導は難しいですし、群舞の経験がなければ、合わせて踊る事の難しさとコツを伝えることは出来ません。想像で指導してはならない、と思います。だから教えるなということではなく、分からない部分は指導者同士が協力し合うべきではないかと思うのです。分からないから想像で指導するのではなく、優れた教師に教えを請うことだと思うのです。
ダンサーを育てるのは、一人で出来ることではありません。
良い教師ほど、自分の力の無さに気づいていると思います。

神戸> 私も多くの先生方に学びましたが、そうだと思います。

井脇> 一方、大人でバレエを習う方々は自分で選択する意思があるし、知識を持っているのですから、一括りに先生の責任にはできないと思いますが、小さい子供たちに対しては指導者の責任は重いと考えています。才能のある子どもたちが、才能があるがゆえに自分だけの生徒にしておきたいという気持ちからか、ダブルスクール禁止、講習会禁止って外の世界と隔離してしまう。これは非常に残念だと思っています。幼いうちから何人もの先生に指導を受けるのはオススメ出来ませんが、本人も教師たちもこの子はプロになっていく…とその道を志すのであれば、視野は広いほうが良いと思います。

神戸> 一人の先生に出来ることって限られていますよね。

井脇> そう思います。

神戸> 私も思うんですけど、先生ご自身も子どもたちをどうやって成長させていけば良いか、考えて考えて指導されていると思うのですが、結局はその子自身が、色々な場所で色々な経験をして吸収しながら、ダンサーって出来上がっていくものだと思うんですよね。

井脇> それと、バリエーションは本来、プリンシパルダンサーが踊るもの、ということを忘れないでいるべきかなと思います。小学校の子供達が、危なっかしいポアントワークで振付をそのまま踊っているのを見ると、怪我をしないか心配になります。

神戸> そう思います!

井脇> だからこそ、ある程度の年齢になるまでは、同じ先生にきちんと基礎を学んで欲しいと思うんです。本当にその先生はこの先も付いていける先生かどうか、じっくりと見極めた方が良いし、そこで出会えた先生に徹底的に付いて行って、きちんと基礎を学んだ上で、中学生になったらトゥシューズ、その先にバリエーションを踊り始めても、全然遅くはないと思います。トゥシューズも体格にもよりますが、小学校の高学年か中学生からで十分だと思います。

神戸> そうですね。やっと最近、小学校高学年にならないと履かせないというお教室が増えてきたなとは思いますけど。

井脇> ポアントは、履き始めが本当に大事!年齢で一律できないものだと思うのです。私のスタジオでは、ポアントの許可を出した生徒を連れて、ポアントを買いに行くところから付き合います。そしてみんなと一緒のレッスンで履く前に、個人レッスンを数回受けてもらいます。そこでポワントのリボンの付ける位置、加工の仕方、履き方、立ち方、降り方と、ある程度一人で出来るようになってからレッスンでみんなと一緒に履くことを許可しています。良く分からないまま買ってきたポアントを、加工もせずに履いて、見よう見真似でエシャッペなんて、怖いなと思います。変なくせがついてしまったら、その癖はなかなか直りません。ですからそこは親御さんにもしっかり説明してご理解いただいています。

神戸> 一番最初にどのポワントを選ぶのかというところが本当にアドバイスして欲しい所だと思うんです。自分に合ったポワントを探せずに履いてレッスンすることで骨の変形だったり、今後の成長、体の成長を妨げる場合があるので、ただみんなが履いているシューズだから、人気があるシューズだからという風には選んで欲しくないなって思っているのですが、今回井脇さんがそのようにされているお話を聞くとますます先生が責任を持って子どもたちの面倒を見る必要があるなと思いました。

井脇> 時には一足ではなく、2足、3足と違う種類のポアントを試してみましょう、とアドバイスする場合もあります。お金は掛かりますが、これから身長も伸びるし足も大きくなるから大きいものを買っておこうとか、安いものとか、長持ちする硬いもの選んでおこうとかではないということを親御さんにもお話をして理解して頂いています。ポワントシューズはただのシューズではなく、バレエダンサーにとっては体の一部なんだっていう認識や理解をしていただくのが、結果的には無駄にならないと思うのです。

神戸> 自分に合ったものを最初に選べれば、将来的に金額的にも抑えられるかもしれませんし、一番最初の段階で時間と労力をかけて欲しい部分ですね。

井脇> そうです、やっぱり最初に合わないポアントを履いたことによって、筋肉が変についてしまったら、それを直すのにそれこそ無駄な時間もお金もかかってしまいます。後で気付いたとしてもよっぽどの努力をしなければ変えることは出来ません。体のことを考えて、じっくりと長く付き合えるポアントを探して欲しいと思います。

神戸> 本当に必要な部分とそうでない部分を判断していただきたいですね。こういったお話を聞くことが出来て、今回のインタビューはとても貴重だと思います。

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IwakiBalletCompany芸術監督井脇幸江さんへのインタビュー③

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